「いつもお世話になっています。実は来月から、予算の関係で単価を10%ほど下げさせていただきたいのですが……」
更新時期が近づき、届いた一通のメール。そこにあったのは、感謝の言葉とセットになった「条件悪化」の打診でした。
個人事業主にとって、報酬の引き下げは生活に直結する死活問題です。「ここで断ったら契約自体が切れてしまうかも」と不安になり、つい飲み込んでしまいそうになりますよね。
結論からお伝えします。クライアントからの減額要請を、そのままの形で受け入れる必要はありません。
条件が悪くなるなら、それに見合った「作業の軽減」や「別のメリット」をセットで交渉するのが、対等なプロの姿です。
- 単価を下げたいと言われたら。減額要請の裏にある事情を探る
- まずは理由を深掘りする。予算削減か、評価の低下か
- 私自身の苦い経験 一度下げた単価は、二度と元には戻らない
- 交渉のカード:単価を維持する代わりに作業量を減らす提案
- 公的ルールを確認 下請法・フリーランス新法が禁じる買いたたき
- この条件なら辞めるというデッドラインを自分の中で引く
- Q&A 既存クライアントとの単価交渉を切り出すタイミング
- まとめ 自分の価値を安売りしない。健全な事業継続のための決断
1単価を下げたいと言われたら。減額要請の裏にある事情を探る
相手がなぜそんなことを言い出したのか。本音を推測することから始めましょう。
予算削減という事情
最も多いのが、会社全体の業績悪化による予算縮小です。これはあなたの評価とは関係のない事情です。担当者も心苦しく思っていることが多く、作業を減らすなどの交渉が比較的通りやすいです。
市場価格とのズレ
「もっと安く受けられる人が増えた」という判断です。ここで安易に合わせると、あなたの専門性が「誰でもできる安い仕事」に格下げされてしまいます。
2まずは理由を深掘りする。予算削減か、評価の低下か
打診が来たら、すぐに返事をせず、まずは質問を投げかけてみてください。
- 背景を詳しく伺う
- 「今後の検討のため、背景を伺えますでしょうか」と聞きます。相手は論理的な理由を説明せざるを得なくなります。
- 交渉のテーブルを整える
- 一律カットなのか、あなたの作業内容への評価なのか。それによって、こちらの出すカードが変わります。
- スコープ:業務の範囲のこと。どこまでの作業が報酬に含まれるかの境界線。
3私自身の苦い経験 一度下げた単価は、二度と元には戻らない
あるWebメディアの仕事を月額固定で受けていた時、担当者から「広告収入が落ちているので3ヶ月間だけ報酬を20%カットさせてほしい」と泣きつかれました。
私は快諾してしまいましたが、3ヶ月が経っても半年が経っても、報酬が元に戻ることはありませんでした。担当者は今の金額が当たり前という顔で、以前より多くの仕事を振ってくるようになったのです。
勇気を出して交渉しても「嫌なら他を探してください」と冷たくあしらわれました。
このとき、一度下げた単価を戻すのは、新規で値上げするよりも10倍難しいと学びました。善意の安売りは、相手にとっての「あなたの価値」を永続的に下げてしまいます。
4交渉のカード:単価を維持する代わりに作業量を減らす提案
「お金が減るなら、仕事も減らす」というのがビジネスの鉄則です。
時給を維持する考え方
単価が2割下がるなら、作業時間も2割減らす提案をしましょう。「報酬はそのままでお受けしますが、その代わり〇〇の作業を対象外とさせていただけますか?」と伝えます。これにより、あなたの労働単価は守られます。
別のメリットと引き換える
お金以外の部分で有利な条件を付け加えます。
- 実績として自分のサイトで実名公開させてもらう。
- 納期をこれまでより延ばしてもらう。
- 支払いサイクルを早めてもらう。
5公的ルールを確認 下請法・フリーランス新法が禁じる買いたたき
あなたの主張には、しっかりとした法的な後ろ盾があります。
フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)
「発注事業者が、フリーランスに対して、通常支払われる対価に比して著しく低い報酬の額を不当に定めること(買いたたき)は禁止されています。特に、契約更新時に合理的な理由なく一方的に報酬を減額することは、法的に問題となる可能性があります。」
6この条件なら辞めるというデッドラインを自分の中で引く
交渉の結果、折り合いがつかない場合、「更新しない」という選択肢があります。
仕事がなくなる恐怖から、赤字同然の条件でしがみつくのは危険です。その仕事に費やす時間のせいで、新しい高単価な仕事を探すチャンスを逃していませんか?
あなたの場合
、一つのドアが閉まると、新しいチャンスが入ってくるスペースが生まれます。自分なりのデッドラインを平時のうちに決めておきましょう。
7Q&A 既存クライアントとの単価交渉を切り出すタイミング
現場の悩みへの回答です。
- 更新の何ヶ月前に交渉を始めるべきですか?
- 契約終了の1〜2ヶ月前がベストです。相手が来期の予算を組む前に動くのが鉄則です。
- 「単価を下げないと他社と比較にする」と言われました。
- これは脅しに近い交渉です。独自の価値があるなら強気でいられますが、不安なら「私のこれまでのナレッジ蓄積を考慮して判断してください」と伝えましょう。
- インボイス制度を理由に減額を求められました。
- 一方的な減額は独占禁止法や下請法で問題になる可能性があります。「公的な指針では問題があるとされています」と冷静に伝えましょう。
8まとめ 自分の価値を安売りしない。健全な事業継続のための決断
契約更新時の交渉は、あなたが「プロの経営者」として試される場面です。
あなたの場合、理由を聞き、作業範囲を調整し、法律を知識の盾にしてください。適切な対価を受け取り、最高のパフォーマンスを出し続けることこそが、本当の意味でクライアントのためになります。